呉ノ朱

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  二.  

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「先生……っせんせ……」
眼下の下で、さっき吸ったばかりの唇がかすれた声をつむぐ。
そう呼ばれる度に、締めつけられる感情が、ある。
手のひらで包み込めるほどのささやかなふくらみを、自分にできうる限りの優しさで揉みしだいた。
華奢な身体。まだほんの少女なのだ、と思う。
その膝を折り曲げさせて、更に深く、自身を侵入させてゆく。千鶴の背が、弓なりに反った。
「あ、……く、っ……」
「痛い、か……?」
汗の滲んだ顔でそう問えば、千鶴は何度も、何度も首を横に振った。
それでも二の腕に食い込んだ指が、槙の言葉を肯定する。
千鶴らしい、と微笑むように思いながら、槙は指でぐり、と千鶴の蕾を押した。
「ぁ、あ……っ!?」
涙を浮かべた瞳が見開かれて、槙と繋がっている、槙がいま触れた場所を見つめる。
きつく、かたく、自分のものを包んでいるそこが少しばかり緩んだことに槙はようやく、息を吐き出した。
途端に、ぐ、と更に深く、千鶴のぬめりが槙を吸い込む。
「……っ……!」
感覚だけでいえば、決して好い、とはいえないまだ固く閉ざされた身体。
それでも槙にとっては、そんなことはどうだってよかった。
禁忌のように、恐怖のように――--ついには繋がることができずにいた千鶴と、いま、ようやくひとつになっている。
「ふ、しぎ……です……」
喘ぎの中で、千鶴がそれでも懸命に微笑む。
槙があまりにも不安げな顔をさせているから、どうにかして、安心させてあげたくなってしまった。
「先生の身体が……っ、私の中に入ってる、なんて」
「!」
千鶴のぎこちない微笑みに、槙の背中をぞくりと駆け上がるものがあった。
「私、女の子で……よかっ、た、です……」
千鶴の震える声に、思いがあふれてあふれて、気が付けば、その腰をつかんでいた。
生徒が、教師が、年の差が、彼女の未来が――そういう総てを弾き飛ばす太陽のような笑顔に、いままで知らなかった自分を知らされる。
人が、ただひとりの人が、同じくただひとりの人を愛しいと、ただ純粋に愛おしいと思うことに、なんの咎があるだろう?
――--何を、畏れなくてはならないんだろう。
「ひ、あっ!」
突然に揺さぶられ始めたことに、千鶴が悲鳴にも似た声をあげる。
槙のものが、自分の入り口をぴりぴりと切り裂いて、中を火傷させて、暴れているのに、擦られる肌はまだ痛くて痛くて、本当は叫んでしまいたいくらいだというのに……なのに、どうしてこんなに幸せを感じるんだろう。
そんな考えが頭をぐるぐると回りながら、千鶴はただ必死に、槙の腕にしがみついていた。
「……いろんなことを、教えられてしまう、な……」
だから吐息に混じって槙が言った言葉も、白く靄がかった頭の中ではよくわからなくて、ただ、打ちつけられる槙の身体を懸命に受け入れる。
うっすらと、瞳を開けた。
とがった顎から汗を滴らせて眉根をひそめた槙の顔は、懐かしい、あんなにも怖かった叱られるときの顔と近しいもののはずなのに、どうしてだろう?
いまは、愛おしくてたまらない。
――---自分がこんなにも痛いように、先生ももしかしたら痛いのだろうか。
そう思ったらたまらなくなってしまって、太股でぎゅう、と槙の腰をはさんだ。
「せ、ん……せっ……!」
体温が欲しくて、もっと肌で槙を確かめたくて、千鶴は背中を引き寄せるように腕を伸ばす。
より深く、槙が千鶴の中に入ってくる。
おなかを突き上げられる鈍痛に息は苦しいはずなのに、それでももっと、槙を感じたい。
「若、名……っ」
額に槙の汗で湿った胸元が押し付けられる。突き上げてくる腰の動きはよりいっそう激しくなって、スーツを着ていた時にはわからなかった逞しい腕が強く、強く千鶴の身体を抱いた。
「す、き……好……っ!」
言い終わらないうちに、槙の唇が千鶴のそれを塞ぐ。
こんなに荒い呼吸が止まって、このまま死んでしまうのではないかしらと思えるほどの眩暈と激しい動悸の中、突然、繋がった身体の中で、槙のものが膨張し――--そして、はぜた。
「!」
激しく揺さぶられていた体が、ようやく静止する。
「はっ……あ……っ」
槙の大きな身体が、胸の上でびくりびくりと二三度跳ねて、そうしてようやく、槙は長い息を一度、吐き出した。
肌から伝わってくる、あまりにも早い鼓動。
それが自分のものなのか、それとも槙のものなのか、千鶴にはわからなかった。
槙とようやく繋がれたことが、自分の至らない身体に槙が感じそして達してくれたことが嬉しくて、少しずつ現実を取り戻し始めた瞳に、涙が盛り上がる。
「……ふ……っ」
泣き顔なんか見られたら、先生、きっと、誤解する。
そう思ってこらえようとしても、どうしたって涙は溢れてしまって、止められない。
槙の手が繋がったままだった場所に伸びて、薄膜に包まれた根元を押さえるようにしながら槙自身を引き抜かれる。
後処理をしていた槙が不意に千鶴に気づいて、怪訝な顔をさせた。
「若名……?」
――-ほら、誤解された。
千鶴は懸命に、首を振った。
「やっと……せんせ……と、できたって思っ……ら、嬉し……て……っ」
笑おうとしたのに、元気な声でそう言おうとしたのに、声はうまく発されてはくれなくて。
泣いているのは千鶴の方なのに、槙までなんだか泣きそうな子供のような顔をさせて、降ってきた手のひらが、引き寄せるように頭を抱いて、頬に押し付けられた。
「お前は、本当に――---」
こういう愛おしさを。こんな、胸が詰まるような愛おしさを、なんと呼んだらいいだろう。
千鶴の涙を頬で感じながら、槙はたまらない心地で、瞳を閉じた。
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