呉ノ朱

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  四.  

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「ここって」
玄関に立ちすくんだままのお姫様は、未だ魔法が解けていないのだろうか。
もうインナーだけになって臨戦態勢を整えていた私は思わず、吹き出しそうになる。
「ここまで入っといて、ここっても何もないでしょうよ。ラブホテル。昨日は連れ込んだくせに」
「あれは……!」
カッと、耳が赤らむ。
この人、もしかすると本当は、すごく照れ屋の恥ずかしがりやで、だから普段は一生懸命あんなふうにしているんだろうか。
…………どうしよう、それってすっごく、ゾクゾクする。
「わかってる。何にもなかったんでしょ。……じゃあ、今日はしようよ」
「それは……できない」
まだ、別れた奥さんに操でも立てているつもりなんだろうか。
私はわざわざ玄関まで行ってお姫様の手を引く。意外とあっけなく、彼女はフロアへとやってきた。
「何も、普通にセックスしよう、なんて言ってるわけじゃあないのよ」
ドン、と突然、ユイの肩口を押して。
気が抜けていたらしい彼は、そのまま、背後のベッドへと沈みこんだ。
「なっ、何を……」
「したかったことを、してあげる」
ギシリと、膝を載せた重みでスプリングがきしんだ。
ああまるで、肉食獣にでもなったかのような気分だった。
「女の子みたいに、抱かれてみたかったんでしょう」
「!」
悪魔が囁くとしたら、きっといまの自分のような声なんだろうと思うくらいの、甘い声。
ユイは視線をそらして、それでも逃げるそぶりはかけらもなかった。
「でも、男が相手じゃ何かが違う。だけど女と普通にセックスしても何か満たされない…………違う?」
返答はない。当たった、ということに違いなかった。
ワンピースの裾をまくりあげれば、あらわになるのはスネ毛の生えた男の足。
ストッキングで隠していても、決定的に違う骨格は、少し物悲しくさえある。
その足を、つう、となで上げた。
びくりと腰のあたりが、震える。
「想像、できるでしょ。いまあなたは女の子。頭の中で思い描く自分が、どんなふうに乱れるか」
指の先端が、シルクの質感をとらえた。
女性モノの下着。あの、例のブラジャーと対になった高級下着。
それはしかし女性のそことは異なって、盛り上がり、彼の先端がのぞいている。
身体を倒して、舌をちろりと、その先端に這わせた。
かすかな塩味と、むっとこもった、男性的な臭い。
「あっ……!」
高い声。
両手が、スカートにもぐりこむようにしてある私の頭に添えられる。
「ユイちゃん」
名前を呼んだ。
唇で、先端を含む。膝がびくりとあがる。
「すごい……溢れてきてる」
「やっ……やめ……てくれ……っ」
言葉ではそう言ったって、身体は何とやら、だ。
普通に聞いたなら、きっと、男女が逆転しているはずの言葉。
でも、いま抱いているのは私で、抱かれているのは確かに彼……彼女だった。
下着を太もものあたりまで下ろして、わざと、音を立てながら吸った。
彼の頭の中で、これはどういうふうに変換されているんだろう。
クリトリス、だろうか。
だんだんともう、そんなことはどうだって、よくなってくる。
「あっ!あ、あっ、あ……っ!」
低いトーンだった声が、艶めいた喘ぎ声に変わって、頭に添えられていた手に力がこもる。
「だめっ、だ……め……だっ」
「何が?何がダメなの?」
笑いを含んだ声で、私の喉が、思わずくっと鳴った。
女の子としているときと、遜色のない反応。
――――--可愛い。
「やめ……、出……出る……」
「そう」
その言葉に、唇を離すとぐっと根元のあたりを握る。
射精させるわけにはいかなかった。
射精したら多分、彼は冷静になってしまう。
この熱をできる限り長く、保たせなければならない。
冷静になれば、凄い絵面かもしれない。
それなりに美しいとはいえ、女装した30半ばの男と。
体躯は男に負けないながらも多分、ごく一般的な女にしか見えない私と。
「もうちょっと、遊ぼっか」
そう言って、笑った。

床に転がっていたカバンをたぐり寄せて、中から化粧ポーチにしては大きすぎるポーチを取り出す。銀色に光るパッケージを歯で破って、取り出したのはコンドーム。
「………………」
ベッドから少し首を上げるような体勢で、ユイは、私の一挙一動をただ、見守っていた。
まるで、男がコンドームを着けるのを待つ、女のように。
本当にいやなんだったら、いま逃げることだっていくらでもできた。
ううん、それ以前に、道行く人たちに奇異の目で見られながらもここまで歩いて、カウンターで鍵を受け取るときだって、いつだって帰るチャンスはあったのだ。
それでも彼は、選んだ。
彼も多分、わかってたんだろう。私が彼に対して、何をしたいのかってこと。
「…………っ」
コンドームを伸ばすと、手早い動きでユイの男性自身の根元を縛り上げた。
これでしばらく、射精は抑えられる。
「痛い?じゃあ、ほぐそうね」
そう言って、ポーチの中からボトルを取り出す。
一見、ごく普通の化粧品メーカーのマッサージオイルのボトルだけれど、中身はちゃんと、ローションに入れ替えてあった。
とろりとした質感のそれを、まるでパンケーキにハチミツをかけるようにたらすと、その冷たさで、ユイの身体がびくりとはねる。
「冷たかった?ごめんね」
少しも悪びれない口調でくすりと笑って、私は手のひらでぐに、と、ペニスを下腹に押し当てるようにつぶした。そして、こする。
「は……っあっ!」
ユイの顎が、のけぞる。顎までは気遣いが届かなかったのだろう、ファンデーションのない、男の顎。
私にとってはもう、このユイが男でも女でも、どっちだっていいことだけれど。
添い寝のように身体を落として、その顎のあたりを舐め上げた。
「すっごい……グチャグチャ。音、聞こえる?」
「聞こえ……る……」
うわずった声が、喘ぎまじりで耳元をくすぐる。
ああもう絶対、私、濡れてる。
どろどろになった指でしばらくペニスの先端をもてあそんで、つ、とその下へ。
皺の寄った感触に、そっと触れた。
「そ、そこ……は……っ」
ユイがハッとした顔で私を見た。熱っぽい瞳。
「なあに? ここ、オマ○コでしょ?気持ちいいとこ、なんじゃないのかなあ」
多分嘲笑のように、私は笑った。
言い終わるが早いか、指の先端をつい、と少し中に押し入れる。
「ひ…………あ……っ」
ユイの片方の手が、シーツを握り締めた。
多分、彼はアナルバージンなんだろうけど、こっちだってそれなりに、自信はある。
「吸い込まれてくよ。……よっぽど、欲しかったのかな」
ぐ、と少しずつ、指を沈ませていく。人差し指で周囲をほぐしながら、中指で腸壁を押しやるように。
ユイのおなかの中は案の定、浣腸なんかしなくてもきれいになっていた。
だってあのソバ屋で、焼酎にきっちり下剤を仕込んでおいたから。
結構、苦しかったんじゃないかな。
つまり私は、あのブラジャーがユイのものだとわかったときから正体は薄々気づいていたし、あのすがるような目を見たときから、今日はこいつとセックスすることになるんだろうな、と、予感していた。
「すごい、ゆるくなってきた。……やらしいねえ」
「やめ……てく……れ……」
その言葉も、嘘。
女装と、低い声での哀願って、意外性があって、結構そそるもんだなんて新発見をする。
指をくっと曲げて、その場所を探り当てたとき、ユイの目が大きく見開かれた。
「あ!……あ……っ!?」
「初めての感覚、でしょ。処女のユイちゃん」
楽しくてしかたがなくなって、もう笑いを含んだ声でべろりと耳を舐める。
膝を使って、熱く屹立したままのペニスを擦る。
指で前立腺をしっかりと捕らえて、バイブレーターのような振動を送った。
中指をくわえこんでいる襞がひくひくと、震えているのがわかる。
「気持ちよくなって、いいよ」
女の子とセックスするときのように、囁いた。
またあのすがるような瞳が揺れて、キュッと、私の二の腕をつかむ。
――――--おいおい、可愛いじゃないか。やめてくれ、萌えちゃうでしょ。
「あっ、あ……っ、あ……!」
女の子のような、かん高い、こきざみな喘ぎ声。
男だって、抱かれるときはこういう声を出せるものだ。
あながち、ウチのゲームで男同士のホモマンガを描いている女の子たちの妄想も、まるきりの嘘じゃないんだよ、なんて思う。
いまも実際、ユイのバックには花が咲いて見えそうな光景だったのだから。
「気持ちいい?」
「………………っ」
まだ抵抗があるんだろう。ユイは固く目を閉ざして、ただぎゅっと、私の腕をつかむ。
私は耳たぶを軽く、噛んだ。音を聞かせるようにねぶって、吐息をふきかける。
「言って。やめちゃうよ?」
優しく、促すように、囁く。
それでも押し入れた指は激しく、彼の性感を刺激し続けた。
うっすらと一度、瞳が開いて、ためらうような色を揺らす。
「…………い…………いい…………っ」
それだけ言って、恥じ入るように顔をうつむかせた。
――――-この瞬間が、たまらない。
ぞくりと、背筋があわ立つ。
もしも私にペニスがついてたら、いまのこの瞬間だけで、射精できるかもしれない、なんて思う。
私は指を抜き取ると、ポーチから転がっていた携帯用の除菌シートで拭う。
本来なら薄いゴム手袋か指サックを使いたいところなんだけれど、あまりに無粋だから、こうすることにしていた。
「………………?」
絶頂の入り口で刺激を止められて、ユイは突然、見放されたような感覚になったはずだった。
私は微笑んで、ポーチから取り出したそれを、まだぽっかりと口をあけたままの、ユイの"秘部"にあてがう。
「な、何を……」
「力、抜いて」
言うが早いか、細い先端をすっと、指のかわりに挿し入れた。
「んっ…………!」
指とは違う感触に、ユイの全身が緊張したのがわかる。
アナルバイブ。ごく初心者用の、細くやわらかいタイプのもので、どうしてそんなものを私が持参しているかと聞かれても、それはこの物語においての禁則事項、ってやつだ。
自由になった両手で、ユイの根元を縛り上げていたコンドームを外した。
「あ、ぁっ!」
パシン、と音を立ててゴムが跳ねると、一気に血液が流れ出したそこは、いっそう太く固く、屹立する。
そのすっかりほてってしまったペニスに、真新しいお洋服を着せてあげた。
少しでも刺激を緩和させないと、すぐにイッちゃいそうだから、この人。
「ねえ。いま何が入ってるか、わかる?」
ユイをまたぐようにして両膝をついた私は、彼を睥睨するように、見た。
うっすらと開かれた瞳には、涙さえにじみそうだ。
かすかに首を振る。きっとあんまり、詳しくないんだろうなあ、こういうことに。
その切れ長の、美しい瞳に見せ付けるように、私は手の中のスイッチを晒した。
「バイブレーター。知ってはいるでしょ?」
「あ!!」
そう笑って、歯車のようになっているスイッチを指で押し上げる。
ブイン、と鳴る、いやらしい音。ユイの身体がその電気信号のままにびくびくと反応する。
「や、やっ、な……なんだ……これ……っ!」
「おちんちんよ」
私は少し、腰を落とした。もう下着は着けていなかった。
太ももに滴るくらい濡れた、私自身の秘部にゴムの質感があたる。
薄膜を通してもユイのそれは熱くて……いまにも弾けそうだった。
「おちんちんが、ユイちゃんのおま○こに入ってるの。どう?」
いやらしい言葉を、至極いやらしく、耳元で囁く。
薄目のユイは一度、責めるように私を見た。
指でユイのペニスを支えて、私の襞に擦りつけるようにする。
「あ…………っ!あ、あっ!」
アナルを犯されながら、ペニスまで刺激されて。
本当ならそろそろ果てたっておかしくないけれど、まだ、足りない。
「すごい、熱い……。ね、入れたい?」
先端の、一番敏感な部分を指で擦りあげながら、私の中にほんの先だけ沈めたり、出したり。
ユイの手が、私の腰をつかもうと必死に伸ばされる。
多分相当、たまらないはずだ。本当ならここで、無理にでも私の腰を引き落として、打ちつけてしまいたいに違いなかった。
「だぁめ。……入れるものなんて、ないじゃない?ユイちゃん、女の子なんだから」
そう言いながらも、私の声にも喘ぎが混じった。
すがりつくような瞳。犬の瞳だ。
くりぬいて、しゃぶってしまいたいような、可愛い目。たまらない。
「ください、って、言ってごらん?」
くすりと笑った。
もちろん、あざけっているんだ。
ユイの瞳にはまだ抵抗の色が残っていて、それでも私は目をそらさない。
視線だけで、命令する。
くじけてしまえ。この快感の前に、ひざまづけ。
「………………い…………っ」
「聞こえない」
冷水どころか氷水のように冷たく、言い放つ。
ユイのペニスの先端を、私のそこに埋める速度を速めて、煽るようにしながら。
ユイの瞳が一度私を見、ためらうようにそらされる。かたくつむられる。
そうしてもう一度私を見たとき、もうそれは、完全な隷属の目をしていた。
「く、ください………………っ!」
――――――--堕ちた。
腹の底からおかしくて、たまらない快感に、私は一度のけぞるように心だけで絶頂した。
危ない危ない。うっかり挿入しちゃう、ところだった。
「あげない」
思いっきり笑ってみせて、ユイの瞳が絶望に揺れるのを見ながら、アナルに挿しいれていたバイブを奥に、つっこんだ。
下腹部に座り込み、とろとろになった私の秘所の感触を肌にこすりつけるようにしながら、コンドームを引き抜く。
「…………あ、あっ……!」
臀部にあたる、熱い熱いそれを、後ろ手で一気に擦りあげた。
「気持ちいい?ね、どっちが気持ちいい?クリトリス?オマ○コ?」
「ど……どっち、も……っ!……っ、イ、イく……っ」
早口で、テンションをあげる。手のひらの中のペニスが膨張して、腰ががくがくと震えている。
私は思いっきり、ペニスをつかんだ。バイブレーターのスイッチを、マックスまで上げる。
「あ、あ…………っ!!」
びく、びく、と二、三度震えたそれは、私の手に、尻たぶに欲望を吐き出して、果てた。
開かれたユイの唇にはもうほとんど紅なんか残ってなかったけれど、唾液で濡れたそれが彩る紅潮した"彼女"は、それまで見たどんな瞬間のユイより、美しく見えたのだった。

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