呉ノ朱

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  十五.  

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白い肌が、窓から差し込む夜の灯りに浮かび上がって、うっすらと目をこらせば見えるそこは、傷口のようだ、と思った。
指を十巴の襞に軽く擦りつけるようにして動かし、クリトリスを押し潰すようにして擦った。びくびくと膝が震える。胸が苦しい。
そっと、尖らせた舌をクリトリスに触れさせる。体液に混じって、鉄のような味がした。だがその味が嫌いではなかった。
「あ……やっ……!」
十巴の手が、行幸の髪をくしゃりと握った。
ぬろ、と舌を動かして、クリトリスを小刻みにくすぐったり、時に強く吸う。その度に十巴の身体が反応する。喜びに死んでしまいそうだった。
指でクリトリスを弄びながら、そっと襞に舌をすべらせる。ひくひくとそこはわなないていた。
舌でのクリトリスへの愛撫を続けながら、指を一度しゃぶり、唾液をつけてそっと襞に添える。そうしておそれるように、差し込んだ。
――人の身体の中は、こんなにも熱いのだ。
ざりざりとした肉の触感だった。十巴の反応を見ながら、人差し指を慎重に、奥へと進めていく。
と、その一点で、十巴の身体がびくりと反応した。
行幸はそれ以上指を進めるのを止め、くっと上に軽く曲げる。肉襞が指を圧迫する程に包んでいた。
「ここが……気持ちいいのか?」
思わず声を発してしまった。いつもよりずっと、低いしゃがれた声だった。
十巴が喘ぎながら、一度頷く。
「行幸……はや、く……」
いれてほしい、ということだろう。けれど行幸は答えずに、指を微弱に動かして、上壁をくすぐる。時に強く、時に軽く、時に掻きむしるように。
「あっ、あ、あっあー!!」
十巴の身体は、声は、面白いほど応えてくれた。ぞくぞくとこみあげてくる感情がある。
しばらくの間そうしているうち、十巴の反応が明らかに変わってきた。ひくひくと、襞が痙攣始める。
「あ、あ……あっ!」
びく、びく、と絶頂の直前を十巴が迎えようとしている。十巴の中で、走り抜けるような絶頂感が出口を探しているのがわかる。
行幸はすっ、と、指を抜いた。
「えっ……あ……!?」
絶頂の直前で、突然放り出されたことに、十巴は戸惑っているようだった。膝を擦り合わせて、そうして中途半端なままに止められてしまった絶頂感の行き場を探している。
熱い。抱えた十巴の太腿が、ぴくりと反応する。
「やだ……みゆ……き……っ」
懇願するような、うわずった十巴の声と表情。急くような気持ちで、先端を埋める。
くっ、と、少しだけ押し入れる。自分が思っていた以上に容易く、ずっ、と、自分のものが十巴の中に収まっていく。
――--ひとつに、なる。
他の誰とセックスしようと、そんなことを思ったことなんかなかったっていうのに。
「んあっ…………!」
さっきまでの抵抗感は既になく、陰茎の中ほどまでが十巴の中に吸い込まれていった。
行幸は身体を十巴の上へと落とす。顎のすぐ下に、口をへの字に曲げた十巴の顔があった。
「いた、い?」
「……いい。動かして……っ」
十巴はそれだけ言って、行幸の肩に顔をうずめるように、ぎゅうと背中を抱きしめた。
――--ひとつに、なってしまった。
身体を押し拡げられる苦しさも、そんな不思議な感想でなんだかどうでもいいことのように思える。
「動いたら……止められなくなりそう」
十巴の中は暖かくて熱くて、腰は疼いて早く、早く、と急かしているのに、行幸は抱き合ったまま、十巴の頭を抱いて動くことができなかった。
「バカ。早く……しろって……!」
腕の中で、十巴がに、と笑った。やせ我慢だとわかっていたのに、その顔を見たらもう、我慢なんかできるわけがなかった。
軽く引き抜いて、深く挿し入れる。擦れたことで生じた刺激が、頭をぼんやりと白くさせる。
「ん……っ!」
十巴の身体が、律動に合わせてのけぞった。
感じているわけなんかない。そうわかっていても、そんな十巴を見るのは初めてで、もっと見たい、もっと、もっと、と、貪欲な自分が腰を動かさせる。
「十巴……すご、い」
頭のてっぺんが、誰かに引っ張られるような、気が遠くなるような快感。
舌の奥が痺れて、身体が勝手にリズムを刻む。
激しく、何度か動かしていくうちに突然そこは滑らかに行幸のものを受け入れ始めた。
「……っあ!?、あ……っ!」
固く瞑っていた十巴の瞳が一瞬開いて、驚いた顔をさせる。
行幸は少し、笑った。
「ここ、いい……?」
十巴の体内で、トン、とあたる壁がある。そこを擦りあげる度に、十巴の身体がびくりと震えた。
十巴にとってみれば、初めて覚えた快楽だった。
あの文化祭の夜、あの教室で行幸に擦られて覚えたそれとはまた違った、頭がとろけてしまうような甘い刺激。
「あ、い……いいっ……!」
閉じられなくなってしまった口から、喘ぎと共にそんな言葉を吐いた。
行幸の身体の一部が、自分の中をかきまわして、暴れている。
そうしてそれは、それはとても、気持ちがいいのだ。
「もっ……と……」
肩に爪を立てるようにすがった。
腰が浮いて、行幸の腰骨がかつかつとあたるのがわかる。
それが押し込まれるたび、身体が緊張して、締め付けることでさらに強い刺激が生まれた。
「あ――――!!」
十巴が叫んだ。
それを包んでいる肉襞が、痛いほどにぎゅう、と締めつけられる。
意識していなければ、そのまま射精してしまっていただろう。
そうして十巴は、びく、びく、と、身体を震わせる。
絶頂したのだ、と、行幸は理解した。そう思うと、十巴のことがたまらなく愛おしくなった。
行幸は繋がったままで、腰を動かすこともできずに、十巴の身体に覆い被さる。ぎゅっと、十巴の頭を抱いた。胸が苦しい。
――どうしたらいい?泣いてしまいそうなんだ。
十巴と繋がれた。ずっと欲しかった十巴の身体に、行幸は挿入した。それで十巴が絶頂した。
そのことが、たまらなく切なくて、苦しい。
「みゆき……みゆき、好きだ……っ」
かき抱くように抱きしめられ、そっと、耳元で十巴が囁く。行幸は目を見開いた。
何と答えればいいだろう。 行幸は答えることができなかった。
その言葉にこんなに幸福を感じ、こんなに満たされているのに、自分は十巴の言葉に、何も言葉を見つけられないのだ。
――--ずっと、十巴が好きだった。いつも十巴だけを見つめていた。
友達で、親友で、そこには男も女もなく、そんなことがどうだっていいほどに、行幸の世界はいつだって十巴でいっぱいで……。
「ともえ……っ」
涙があふれてしまって、止められない。セックスの最中だっていうのに。
――--俺はもう死にたい。死んでしまいたい。十巴に愛されて、こんなにも幸せなこの気分のまま、いま、この瞬間死んでしまいたい。
離れたくない。この時間が終わったら、自分たちはもう離れ離れだ。
そんなことを思いながら、十巴の身体を強く抱いた。
「好きだ、十巴……っ」
身体の下の十巴が、すすり泣きのような喘ぎ声をあげていた。
行幸は、すすり泣いていた。
――--好きだなんて決して言わないと、あの秋の夜に誓ったはずだった。
ずっと友達で、ずっとずっと友達のまま、彼女が誰かを選び穏やかに老衰し、幸福な人生を歩んでゆくのを見届けて、最後のその瞬間まで見届けて、その時に、死んでゆく彼女にずっと愛していたと、世界中の誰より愛していたと、十巴だけを愛していたと、心の底から告げようと。
そんな、少女の淡雪のような誓いを、いつだって十巴は蹴り倒すようにして、破ってくれるのだ。その足で。
「みゆ、き……?」
動きを止めてしまった行幸に、十巴が怪訝な顔をさせる。
行幸が泣いていることに気づいて、十巴はふっと微笑むと、その涙を手で拭った。
「痛いのはあたしの方なのに、なんで行幸が泣くんだよ……」
曇りのない笑顔でそんなことを言われたら、余計に泣けてくる。
……躊躇いがあった。そっと、そっと、唇を触れた。
怖かった。たまらなく怖かった。十巴にくちづけることがもう怖かった。本当はいつだって怖かった。
そんなこと止めてしまえと何度も思った。
十巴の中に入れた自分の肉欲のそれは、もうすっかり機能しなくなってしまっていた。
そっと、唇が十巴のそれに触れる。――柔らかい。
どうしよう、柔らかい。たまらなく柔らかい。
「……? あ……っ」
触れた十巴の唇の柔らかさに、再び大きくなってゆくものがあった。
頭が白んで、十巴の身体のことを思いやる余裕なんてもう、どこにもなかった。
「あっ……んっ、あ……!!」
揺さぶり、突き立て、激しく動かし、そうしてじきに、絶頂がやってくる。
十巴に抱きしめられている。幸せすぎて、おかしくなりそうだ。
頭の中はもう真っ白で、こみあげてくる絶頂感しかもうわからない。
十巴の中で、自分のものが一度大きく膨張するのがわかる。
十巴の中が脈打って、ぎゅう、と痛いほど締めつけられる。
愛している。愛している。
「あっ…………!」
細い、けれど筋肉のついたしなやかな腕で、強く抱きしめられた。
行幸もまた十巴の頭を強く抱いた。
一度、叩きつけるように十巴の中に押し入れたそれは、脈打ちながら、射精した。
十巴の襞もまた、何度か強く鼓動のように痙攣し、そうして、止まった。
身体を重ね合わせたまま、十巴の頭を強く抱き、十巴は行幸の背中に手を回して、しばらく動くことができなかった。
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