呉ノ朱

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  30度の傾斜角
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30度の傾斜角
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窓からの風が夏の匂いを運んで、学園で過ごす最後の春の終焉を告げている。
……ああ、もう夏だ。夏が来ている、と、白倉は思った。

藤篠の縁談を知ったあの冬の日から、何ひとつ変化を起こせないままの無力な自分を春は足早に通り過ぎ、夏の足音はもうすぐそこまで迫っていた。
藤篠は、相変わらず自分を見ない。
もうその日常にもいい加減慣れ、飽くほどに彼女と自分との距離はなにひとつ縮まってはいなかった。
夏が来てしまう。


けれどその日、祖父から代替わりで鷺ノ宮学園の理事を継ぐこととなった父親から、白倉はある依頼を受けた。
――――鷺ノ宮の教師の中に、不正行為を行っているものがいる、と。
父が言ったのは、その一言だけだった。
調査してほしい、だとか、どのような不正行為だ、とか、そういった情報は一切なく、だがその一言だけで、白倉は自分が為すべきことを悟ることができた。
父の有力な政治基盤でもある鷺ノ宮に、僅かな傷でもつけてはならなかったから、その父の”憂慮事項”を取り除くこともまた、白倉の姓を持つ彼にとって必然事項だった。
”不正行為”が何なのかは、調査で直ぐに判明した。
ある女子教員が違法薬物を使用しているらしい、という情報。
これが公になれば、代替わりと共に学園を、ひいては父を非難する格好の餌になる。
早急に証拠を揃え、彼女を放逐する必要があった。
だから、学園内、全てのトイレに、監視カメラを設置した。
生徒の性行為、いじめ、トイレの個室内で昼食をとる者……問題として考慮すべき映像は様々に記録されていたが、白倉がそれを見て、眉のひとつも動かすことはなかった。

――――白倉が表情を変えたのは、一度だけ。





「忙しいんだ、簡潔に頼む」
放課後の生徒会室にやってきた藤篠は、やはり自分を見なかった。
それは相変わらず白倉の心を傷つけたが、これから先に自分が行おうとしていることは、どれほど彼女を傷つけるだろう。それを思うとかわいそうで痛ましくて……笑いだしてしまいそうだった。
「これが、次期生徒会選の資料です。御覧ください。僕としては5年の黒崎くんが最有力だと考えていますが」
そう言いながら、茶封筒を手渡した。
瞬間、藤篠の指が触れて、白倉は微かに躊躇した。
これで、自分は彼女に愛される資格も未来も手放す。そして、代わりに彼女をひととき、手に入れる。
――――だって、夏が来てしまうから。
そうして藤篠の指が触れ、茶封筒を受け取ると――――白倉の手の中からは、彼女との正統な可能性が、失われた。
藤篠は、その中身に目を見開いていた。
白倉は、その表情に歓喜し、そして、絶望した。
女子教員トイレに設置したカメラは、たった1日だけの記録で奇跡的な成果をくれた。
そこにはくだんの女子教員が個室内で違法薬物を使用する姿もきっちりと映し出されていたが、それ以上に貴重なものが映っていた。
――――自慰に耽る、藤篠一乃の姿だった。
鷺ノ宮学園の授業レベルはおそろしく、高い。
保護者や生徒の干渉の声も要求も高く、生徒たちの自治による特殊な校風もあいまって、教員たちが常に強いストレスに晒されていることはわかっていた。
心を病んで、身体を壊して辞めていく教師も少なくない。
あの女子教員は薬物に逃げ場を求めたし、藤篠一乃は”学校のトイレで自慰をする”という逸脱行為で解消していたのかもしれない。
藤篠がいま、手にしているのは、その映像からプリントされた自分のあられもない姿だった。
白倉にとっては、この上なく決定的な切り札だった。
それを見つけた瞬間、白倉は震えた。嬉しかったからだ。
「――いかがですか、藤篠先生?」
彼女がいま、どんな気分でそれを見ているのか、察するに余りあった。
その手から封筒が滑り落ち、プリントアウトしたその写真だけを掴む指が震えているのを、白倉はぞくぞくと突き上げるような快感の中で、見る。
「な、ぜ……これを……」
震える藤篠の言葉は、それが真実であることを認めてしまっていた。
「合成ではないことは、先生が一番良くおわかりですよね」
自分が背後に立ったのも気づかないほど狼狽した藤篠の手からプリントを抜き取って、会長席へと戻ると、寄りかかるようにして机に手をついた。
「最近、風紀委員から校内で性行為を行っている生徒がいるとの報告を受けましてね、僕としては不本意だったのですが……試験的に監視カメラを」
「教職員用トイレには不要だろうが!」
授業では時々耳にすることもあった彼女の恫喝が、自分に向けられるのは初めてのことで、普段は決して隙を見せない彼女の生の感情が露呈していることに、白倉は心底喜びを感じる。
「そう思われるところが盲点なんですよ、あの場所は」
叩きつけるように机の上にプリントを投げると、藤篠に微笑んだ。
「設置したのは昨日一日のみ、チェックしたのは僕一人です。ご安心下さい、今日にはもう撤去しました」
本来の目的は果たした上に、こんな素晴らしいお釣りまで来た。もう必要がなかった。
ひとつひとつ、芝居がかった言葉を選んで発していく。
去年の夏、この部屋で彼女にハンカチを返したあのときに比べたら、いまこうして彼女に対峙することは、こんなにも容易い。
「……まさかこんなものが映るとは、思ってもみなかったのですから」
彼女が最も嫌悪するように耳元で囁くようにそう言って、藤篠の肩に触れた。
手のひらから体温が伝わってくる。かわいそうに、震えている。
瞬時に自分の手を振りほどくように離れた藤篠は、瞬間、羞恥の表情を見せただけで、そしてすぐに凛とした、いつもの彼女を取り戻してしまった。
「何が、目的だ」
冷静な、だが静かに敵意をこめた抗議の言葉。
彼女のこういうところが、ああ、本当に好きだ、と、白倉は陶酔してしまいそうだった。
嫣然と微笑い、黒い革張りの椅子にゆったりと腰掛けて足を組む。
「率直に申し上げます。――先生、僕とおつきあいしていただきたい」
「な……っ!」
藤篠が目を見開くのは理解できた。予想できる言葉ではないだろう。
けれど、真実で、そして、賭けでもあった。
「あなたを愛している、ということです」
まだ藤篠より僅かに背が低かった、あの頃はまだ恋ではなかった。ゆるやかに失われていく存在でしかなかった。
去年の夏、あなたがもしもにっこりと笑って『白倉くんね、久しぶり』と言ったのなら、思い出で終われていたのかもしれなかった。
冬が来る少し前、ハンカチを手放したあの日、もし僅かにでもあなたが首を傾げたなら、もっとずっと優しくできた。
――――先生、僕は、ずっとあなたを見てきました。
――――あなたはずっと、逸らしていましたね。
「か、からかうのも大概にしろ!」
藤篠の顔が見る間に紅潮していく。
白倉は、瞳を見開いた。
総ては白倉のシナリオ通りに事が進んでいる。はずだった。
藤篠が、自分の愛の告白に顔を紅潮させ、狼狽した。これだけが、意外だった。
――――やめてくれ、と、白倉は思った。期待してしまいそうに、なるでしょう。
「僕はね、ずっとあなたに恋い焦がれていたんですよ。ご存じなかったんですか?」
そう。
ご存じなど、ないですよね。あるわけがない。
あなたは忘れてしまった。僕は、憶えていました。
ずっと、というのが、いつからなのかあなたは知らない。
「知るわけがないだろう!それが本当なら、その相手にこんな、こんな……っ!」
藤篠が、重厚な作りの会長机を一度叩く。その振動で書類が舞った。
机の上に乗ったままの彼女の淫蕩な、盗撮写真。
それを二度、爪で叩いて、白倉は藤篠を見上げた。
「学園内の規律を守るため、会長の僕としては処分をくださなければなりません。それでも愛する先生を晒し者にするのは忍びない、と申し上げているのです」
白倉は、拳を握り締めたままの藤篠を見た。
脅しているのは自分だ。優位なのは自分のはずだ。だが、縋るような思いだった。
先生。
生徒からの真摯な愛に応えることは、あなたにはできないでしょう?
ましてやあなたがこんなにも嫌っている僕の愛の言葉など、到底信じてはもらえない。
だから、愛でなくていい。取引でいい。
この茶番におつきあいください、と申し上げているだけです。
たとえば家に帰ってから電話で話すだとか、そんな些細なことでいい。
休日に他の誰にも知られないように遠い町でデートをするのでもいい。
夏が来てしまう前に、少しだけ、僕を見てくれればそれで、いい。
取引でいい。心底軽蔑されていてもいい。あなたの心に僕を残す機会が欲しい。
できることなら、それは優しい時間がいい。
先生。
わかった、と、言ってください。
愛してくれ、と、懇願しているわけではないでしょう?
いまならまだ、あなたに優しくすることができる。
いまならまだ、あなたは僕を止められる。
「馬鹿馬鹿しい」
藤篠の表情が、すう、と冷たいものになった。
「私が屈するとでも思ったか?誹謗したければするがいい。……好きにしろ」
藤篠は踵を返して、会長室の入り口へと向かう。もう自分を見なかった。
その背中は、13歳の夏、彼女を最後に見た光景と同じもので、白倉の胸の中に、またひとつ、ぽつりと黒いインクが落ちた。
水はもうすっかりと濁っていて、底が見えない。
それでも、背を向けた藤篠を、心底美しいと思った。
生徒からどれほど詰られても、陰口を叩かれても、面と向かって罵られても、彼女はいつも背筋を伸ばし、いつも、30度の傾斜角で構成された美しい礼をもって、そこに立っていた。
13歳の自分が見た彼女の面影はすっかり失われて、けれど、それだけは変わっていなかった。
美しかった。
「やはり――それでこそあなただ」
白倉は笑った。自嘲だった。そうしてプリント用紙を取ると、派手に破って散らす。
駆け寄って、引き寄せて、背後から抱きしめた。
肩にまわした腕に力をこめすぎないように抑えることに、白倉は苦心した。
本当は力の限りに抱いて、腕さえ折ってしまいたかった。
初めて抱きしめた彼女の身体は、幾度、幾百と想像したそれよりずっと柔らかく、ずっと官能的だった。
その柔らかさが、悲しかった。



「ひっ、人を呼ぶ!」
「どうぞ?先生と僕のどちらの信が厚いか、ご理解いただく良い機会にもなります」
両手を固定し、もう片方をセーターの裾から侵入させる。引き返すことはこれでもう、できない。
「何をイメージされましたか?こうして……男に指でまさぐられることですか?」
「あ、ぁ……っ」
爪を立てて、ストッキングと下着の上から指を恥丘の上で踊らせた。
のけぞった藤篠の頬は紅潮していて、眼鏡の奥には涙が滲んでいた。
「それともこの中を……」
「ひぃ!!」
ストッキングと下着の中に、白倉は侵入していく。陰毛を越えて、隠されていたクリトリスを白倉はきゅうと摘んだ。
むっとこもった熱は、初めて彼女の太ももに触れた日の熱よりも、熱い。
「こんな風に掻き乱されることでしょうか……?」
「や、め……て……」
力を無くした藤篠の身体を、背後から白倉は抱きしめた。ゼリー状の液体がぬるりと白倉の指に絡む。
藤篠の身体が、自分の指に反応している。
それだけで、眩暈のような快楽だった。
「濡れていますね」
くすりと笑い声を含めた白倉は、指を下着の間から取り出すと、藤篠へと見せつけるようにして目前へ晒した。
開いた指の間に愛液が糸をひいて、藤篠の顔に、また朱がさす。
「もっと淫猥なことを御想像されていたんでしょう?男のモノをくわえ込む御自分の、姿態とか」
「い、いい加減にしろ!」
嫌われる言葉を、怒りを煽る言葉を、選んで使った。
濡れた指を口に運ぶ。彼女の味を、知ってみたかった。
だがその腕は藤篠に叩き落とされて、いまは叶わなかった。
「処分は甘んじて受ける。こんなことをされるくらいなら懲戒免職の方がずっとましだ!」
「そうでしょうとも」
乱れた衣類を直しながら叫んだ藤篠に、白倉は頷いてみせる。
だから、あなたに、恋をした。
授業で、廊下で、生徒会室で、あなたは結局一度も僕を知ることはなかったけれど、僕はあなたを知った。記憶の中ではない、いまのあなたを知った。
その気高さを、正しさを、挫折を、抑圧を、失望を、落胆を、知ってきました。見てきました。
――――僕は、一度も目を逸らさなかった。
白倉は顔を上げて、僅かに眉根に皺を作る。
背中に受ける陽射しがまだ春の気配でよかった、と思いながら。
いまが夏ならば、きっと感傷的になりすぎる。
「ではお訊きします。先生、僕を男として愛してくださいますか?」
答えはわかっていた。それでも、訊かずにいられなかった。
だから白倉は、笑えなかった。
「……おまえは、生徒だろうが……」
まるで女優のように、藤篠は正確に、白倉が描いたシナリオ通りの言葉を口にした。
わかっていたことだった。彼女ならば、そう、答える。
白倉は目を一度閉じて、口元をまた、微笑ませた。
「そうですね。生徒です。そして……あなたは僕の先生だ」
くすりと笑った。自嘲だった。
「じゃあ僕はどうすればいいんでしょうね。何度も言ったでしょう。あなたが好きなんだ」
叫びだしそうに、幾度となく胸の中で反芻してきた想いを、ようやく口にした音は静かで低い。
声は掠れていた。
――――あなたは先生でしょう。どうすればよかったのか教えてほしい。夏が来てしまう。
次兄との縁談を邪魔すれば?別な縁談が来るだけだ。そうなれば手も打てない。
卒業を待てばよかった?生徒でなくなりさえすれば、藤篠は自分と視線を合わせてくれるのか。
嫌われている自覚はうんざりするほどだ。憶えてさえいてもらえない。
愛おしさと憎悪は日を重ねれば深くなるばかりで、濁った水はもう堰き止めることができない。
「僕はね、あなたを抱くことだけが目標ではないんです。あなたに愛されなければ意味がない。……そのきっかけが、快楽からだとしても一向に構わないと思っています」
そう、抱くことだけが目標ではない。
愛されなければ意味がない。
同時に、こんな仕打ちをする自分が、愛されるはずもない。
――――ならばいっそ、憎まれたい。
思慕が、恋慕が、裏腹に自分の中に憎悪を教えた。
もしかしたなら、憎悪は恋慕に変わりはしないのだろうか。
きっかけはなんだっていい。 彼女の中に消えない傷を残したい。
もう二度と自分を、どれほど忘れたくとも忘れられないように、どれほど時を経ても膿を出し痛み出すような記憶で、もうよかった。
いずれ彼女が誰かのものになり、触れられるときに叫びたくなるような苦痛を。殺意と憎悪で自分の顔を記憶し続けるような絶望を。その度に、自分は彼女の中で、鮮やかに蘇る。
――――もう愛でなくて、いい。
「え……!?あっ!!」
そろそろ効き始める頃合だと思っていた。
藤篠が、高音の歌声に似た喘ぎと共に、絨毯へと膝をつく。
白倉の頭の中で、彼女が同じ声で歌ったあの歌詞がゆっくりと流れ始めた。
――――アメイジング・グレイス。なんという美しい響きであろう。
跪く彼女を見おろすのは、奇妙な気分だった。
そうして白倉は、その征服感に、酔った。
「御存じですか?恋は脳の錯覚なのだそうです」
そう言って、白倉はネクタイを外すと、藤篠に目隠しをした。
「あなたの身体が快感を覚える。と、それが扁桃体から視床下部に伝わる。 そこにあるA-10と呼ばれる神経の細胞が、ドーパミンを受け止めて興奮する。――-- その興奮が、恋」
その話を知ったとき、ならば人の心とはなんなのだろうと、白倉は思った。
これほど自分を嫌っている藤篠も、快楽さえ与えたのなら、自分に恋をするのだろうか?
指で、太腿をゆっくりと撫でる。
「はっ……あっ……」
「つまり、僕がこうしてあなたに快楽を与えることで、あなたは僕に恋をする」
可能性があるのなら、なんだっていい。試してみたかった。
ゆっくりと平淡な声で囁きながら、白倉は決して藤篠の秘所には触れずに、その周囲を執拗になでた。
――――だから先生、これは実験です。



「っ……!」
やがて、白倉の指によって身体を震わせ絶頂に倒れた藤篠は、まるで寄る辺のない少女のようで、いとおしくていとおしくて、抱きしめてしまいたい感情を奥歯で噛み殺す。
自分にはもう、愛情をもって彼女を抱きしめる資格はないのだと、白倉は思う。
だからせめて、足首を掴んで持ち上げると、跪いた。
「そんな、き、汚い……やめ……っ!」
藤篠の秘所に舌を這わせる。
初めて味わう彼女の匂いと、味。恥らう姿。
ひざまづく白倉の姿は、まるで敬虔な教徒のように藤篠の目に映った。
「――赦してください。非道いことをするつもりはありませんでした」
非道くしてしまいたい、という気持ちと、酷いことをしたくないという気持ち。
その二つがいつだって、藤篠を思うたびに混沌と白倉の中にある。
だから、嘘ではなかった。
掴んでいた足首をそっと降ろし、藤篠の身体を起こした。
手首を締め上げていたネクタイを解いて、立たせた。
震えたまま、言葉を発することができない藤篠のスカートを、セーターを、乱れた髪を丁寧に直す。
振り払われるかと思ったが、藤篠はそれをしなかった。
「僕もただの高校生の、男です。好きな女性の初めて見る姿に興奮して……つい、こんなことを」
痴態に乱れる藤篠は、眩暈がするほど美しく、可愛らしかった。
蹂躙し、犯したい気持ちをどれだけ噛み締めたかわからない。
白倉は、すっと、白いハンカチを差し出した。
あの日のオマージュなのだと、知っているのは白倉だけだった。
「許してください」
藤篠は肩を震わせたままで、答えなかった。
無言で、手が振り上げられる。
白倉は目を閉じた。目を開けたままでは、藤篠が殴りづらかろう、と思ったからだった。
けれど、頬に彼女の手があてられることはなかった。
かわりに、差し出していた手のひらへと衝撃があった。
白いハンカチが、叩き落とされた。
叩き、落とされた。
もうそれで傷つくことは白倉には赦されてはいなかったから、 白倉はただ、去っていく藤篠の背中を見つめた。

――――アメイジング・グレイス。なんという美しい響きであろう。
――――私のようなひとでなしまでも、神は救ってくださる。

藤篠が立ち去り、ひとりになった生徒会室で、白倉は懐かしい歌を口ずさんでいた。
背中から差し込む夕陽は、赤い絨毯の上に影を落としていた。
「…………救われない」
ひとり呟いて、白倉は微笑った。

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