呉ノ朱

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  二.  

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「大きなマンションですねえ」
「まあね」
店から少し歩いたところに、古蝶の住むマンションはあった。
白い外壁と、ガラス張りのエントランス。そこを入ってエレベーターに乗ると、古蝶の部屋だった。
「ここがあたしの部屋。入って」
「お邪魔します」
靴を脱ぎ、フローリングの廊下には自動的にライトがつく。
「一度しか言わないからね。まずここが、バスルームとトイレ」
廊下の右手に白い広々とした、くもりガラス張りのバスルーム、その隣にトイレがある。
「こっちがクローゼット。使いたければ勝手に着てもいいわ。汚さないでよ」
左手には少し狭いが、クローゼットにしては充分な、ウォークインクローゼットがあった。
「で、ここがリビングね」
「わあ……!」
まるで雑誌から出てきたようだ。
広々としたフローリング貼りの床に、黒い革張りのソファー。
シンプルでどこか殺風景だが、豪華な部屋だった。
「で、こっちが私の寝室。あんたの部屋は……こっち」
ガチャ、と開けられた先には何もない部屋があった。
5畳ほどの洋室。開けられていない段ボールがいくつかあるだけだ。
「じゃあ、私はお風呂に入るから」
「あの、古蝶さん、ありがとうございます……」
蛍は涙が出てきてしまいそうだった。
古蝶は眉を顰めてそれを一度見て、後ろを向いたまま、手をひらひらと振った。


「蛍、次お風呂使っていいわよ」
「はい……えっ!」
所存なくリビングの床にぺたりと座ったままだった蛍が振り向くと、そこにはバスローブの古蝶がいた。
胸ははだけたまま、乳房のない、男の胸だ。
蛍が慌てて顔を背けると、ようやくそれに気づいたように一度下を見て、ああ、と言い、そのままキッチンへと入っていく。
「身体は何もいじってないのよ。せいぜい時々ホルモン剤打つくらいね。でも腐ってもオカマだから。変なこと心配しなくていいからね」
冷蔵庫からビールを持ってくると、皮のソファにそのまま座る。
明るく笑いながら、録画していたらしいビデオを見始める古蝶に、くらくらと眩暈を感じながら、蛍はバスルームへと向かった。


「お風呂お借りしました」
パジャマなど持ってきていなかったので、小さな鞄に詰め込んであった高校のジャージと、上にはトレーナーを着た。振り向いた古蝶は、上から下まで蛍を眺めると、くすりと笑う。
「そうやって見るとほんとに田舎の少年ってカンジ。ま、こっちいらっしゃい」
「はい」
ちょこんと床に座る。すると古蝶が一度目を見開いた。
「ソファーに座ればいいでしょ」
「でも、なんだか豪華で、座るの勿体なくて」
蛍の照れ笑いに、古蝶がふっと破笑する。
この一日、怒り顔ばかり見てきた蛍にとってはその笑顔がとても印象的で、思わず呆けてしまった。
「バカねえ。ほら、ここ」
ぽん、と自分の横を叩いてみせる。
古蝶はまだバスローブ姿のままだった。少し緊張しながら座った蛍に、缶ビールが渡される。
古蝶の顔はもうだいぶ赤くなっていた。空き缶がゴロゴロと転がり、口調もなんだかさっきまでとは違ってとろりとして優しい。
「家出記念と上京記念と……引っ越し祝いかしら。ハイ乾杯」
缶を傾けてみせる。乾杯のしぐさを取ると、カチン、と音をさせた。
「お酒飲んだの、初めてです」
初めて飲んだビールは苦かったけれど、乾いた喉には美味しく感じた。
古蝶はそう、と応えて、そして細い指で細い煙草をつまみながら、蛍に視線を落とした。
「それにしてもあんたって大人しい良いとこの子っぽいのに、なんで家出なんて?」
「それは……」
家族とうまく行かなくて、と簡単に説明すると、古蝶は特にそれ以上問い質すことなく頷いてみせる。
「でも、良かったわね、拾われたのがあたしで。あのままだったらあんた今頃あのオヤジに体中舐められてたかもよ?」
あれから古蝶に、あれがどういう状況だったのか、あの中年男性が何を言っていたのか延々と説明を受けて、蛍は目眩がしそうだった。
「はい。ほんとうに良かったです。それに家や仕事まで……。
ほんとうに、ありがとうございます」

古蝶には、何度礼を言っても言い尽くせない。
だが微笑み頭を下げた蛍に、古蝶の表情は険しかった。
「それ」
「え?」
すっと煙草を挟んだ指が蛍を指して、古蝶は煙を吐き出した。
口紅のない唇から白い煙が細くたなびく。
「そうやって、素直なとこはいいけど、もうちょっと警戒心持った方がいいわ。あたしだって、いつでも簡単にあんたをどうにかできるのよ?」
「え……」
おずおずと蛍はその姿を見る。
化粧を落とし、こうして布一枚の古蝶を見ると、どこかしら中世的な雰囲気はあるものの完全に男だった。
顔を紅潮させて蛍がそっぽを向くと、古蝶は意地悪に笑った。
「あんた、男とつきあったことないんでしょう」
「はっ、はい」
隣で身体を固くしていると、古蝶はすっと蛍の頬に手を伸ばす。
びくりと身体が震えた。
「触ってみる?」
はだけたバスローブから、男の胸がのぞく。白く、陶器のようだが、けれど自分の胸とは違うそれ。
いつもなら恐怖の対象であるもののはずなのに、なんだか吸い込まれるように思えて蛍は手を伸ばした。
――あたたかい。
「きれい……」
思わずそう、口にした。白くて、細くて、けれど適度に筋肉はついている。
まるで美術の授業の石膏像のようだ。
「アラバスターの肌、なんて誉められたこともあるのよ」
胸骨に添って撫でる蛍の手に、古蝶は気持ちよさそうにしていた。
自分を見下ろす目は、酔っているのだろうか、赤く潤んでうっとりとしている。
「不思議?女みたいなのに男の身体って。でもあんただって、こうやって見ると胸もないし……男の子みたいね」
頬から耳元にあてられていた手が、すっとトレーナーの中に入った。
ぞくぞくと、震えのような感じが走る。いやでは、ない。
「……あは。ちゃんと女の子じゃないの」
古蝶の細くて長い指が、トレーナーの下から素肌の胸に触れた。
ぷっくりと僅かではあるが丘を作っている胸を柔らかく揉む。
その手はひんやりとして、アルコールで火照った肌に心地いい。
指先が、乳首をつまみ、弄ぶ。
不快感はなかった。上目遣いで、古蝶がじっと見ている。
それを思うと身体が熱くなった。
「んっ……ふ……」
噛みしめていた唇から、思わず声が漏れた。
気持ちいい。
どうしてだろう、古蝶の身体は自分が苦手な男のものなのに、その指に触れられて気持ちがいい。
「感じるんだ? ふぅん……」
トレーナーが捲られて、胸があらわになる。
古蝶の顔が近づいた。舌が胸をすべり、乳首に触れる。
ついばむように乳首をくわえて、軽く噛んだ。
冷たい手とは対象的に、熱い体温を感じる。
「んっ! あ……う」
「ふふ。やらしい声」
乳首から、腹部へと舌が滑る。熱い。
パンツの中へと手が入った。長い指が、手探りで自分の秘所をまさぐる。
「やっ! あっ……あっ」
びくりと蛍の身体が震えた。思わずソファーに倒れる。
古蝶のもう片手が、ショーツをずらした。
指が割れ目をなぞる。茂みの中の蕾に触れた。
「……濡れてる」
ぬるり、とクレバスの中に浅く指が入り、粘液をまとって花芯に塗られる。
がくがくと、腰が震えるような快感だった。
「ね、蛍……触って」
蛍の手が、古蝶の片手で導かれる。導かれた先にあったのは、熱くなった古蝶の男性自身だった。
「そう、撫でたり、握ったりして……」
バスローブの奥で、闇雲に蛍は手を動かした。
中世的な綺麗な今の古蝶の顔と、化粧を施した女のような古蝶の顔が 閉じた瞼の奥でオーバーラップする。
指を沿って撫でていくと、つるつるとした亀頭の先にぬるりと触れるものがあった。
「んっ……」
古蝶が吐息を吐く。
ここが、気持ちいいんだろうか。蛍は指でそのあたりを何度も撫でる。
こんなことくらいしか、古蝶に返せるものがなかった。
古蝶が覆い被さるように、ソファーに肩を沈めた。
「そう、上手。……握ってみて」
手が回らないほど固く、熱いそれをくっと根元で握る。
びく、と古蝶の肩が震えた。
胡蝶が虚ろな表情のまま、蛍の頬を撫で、そのまま耳を舐める。
くちゅ、といやらしい音の次に、ぞくぞくと快感が走った。
「あっ! んっん……は……」
古蝶の舌が、そのまま頬へ、そして唇へと来る。柔らかく、唇が重なる。痺れるような快感があった。さっき古蝶に触れられた花芯が疼くような快感。
熱い舌が、ゆっくりと口腔内に入ってくる。蛍の小さな舌を絡めて、そのまま唇を軽く噛む。
古蝶の身体が完全に覆い被さった。
太腿の下あたりに、ひときわ熱い塊を感じる。
「蛍の肌、きれい……」
胸を撫でて下がっていった古蝶の手が、クレバスを撫でる。
いやらしい音を立てて、指が中へと吸い込まれていく。
「あっ! は……」
花弁を撫でて、中に侵入した指が熱い膣内の壁を撫でた。
蛍は思わず古蝶の肩にしがみつく。
びくびくと身体が震えた。
――触れられることが、抱き合うことがこんなに、気持ちのいいことだったなんて。
「蛍、入れて……いい?」
喉が貼り付いて声にはならずに、こくりと頷くと、バスローブを脱ぎ去った、裸のままの古蝶が自分のそれを握り、何度か蛍のクレバスに沿って上下させた。
奥が疼くような快楽が突き抜ける。思わず腰が浮く。
その腰骨に手をあてて、古蝶が腰を突き出した。
「あぁっ! んっ……んっ」
ぬ、と少しずつ、充血した蛍のそこを押し広げながら、入ってくる。
痛みはない。だが、押し広げられる圧迫感で身体が引っ張られるようだ。
「あんたの中……熱い」
は、と息を吐き出して、古蝶が尚も深く侵入してくる。
見上げた表情は、うっとりと美しかった。
「あああっあ……はっ……は」
ねっとりと粘るような動きで、古蝶が腰を動かした。
両手が、蛍の顔の横に沈む。
「ごめん、凄い……気持ちよくて、勝手に」
腰の動きが激しくなった。
擦られるたびに、自分の奥が、波打ってくるのがわかる。
「古……蝶さ……、……あっ!」
気持ちいい、という言葉は声にならなかった。熱に浮かされたように、古蝶の背中を抱く。いま自分を抱いている人は、身体は男だ。だが、心は女だと言っていた。ではいま、この瞬間は何なのだろう。
酒に酔って、男性としての本能が出てきてしまっただけなのだろうか。
――それでもいい。
求められているなら、応えたい。
「んっ! あぁっ……あ」
古蝶の腰の動きが激しくなった。
蛍の上に古蝶の体重が乗る。頭を抱きかかえられ、抱きしめられるように、激しく身体を揺さぶられる。
「だめ、もう……い、く……っ」
古蝶が喘いだ。いっそう深く、激しく擦りあわされる。
ぞくぞくと、蛍の奥からこみあげてくる、快感。
「あっ! や……あっあああっ!」
「んっう……!!」
一度、叩きつけられるように深く、古蝶の腰が止まり、蛍の中で熱く弾けたものがあった。
古蝶のそれが、びくびくと何度か自分の奥で波を打ち、それに合わさるように、蛍もまた、突き抜けるような快感を感じた。
「はっ……は、ああ……」
古蝶はぐったりと、蛍の上に倒れ込んでいる。
重なった身体から伝わる心音は、あまりにも早く鳴っていた。
ぬるり、と蛍の中から古蝶自身が抜き去られた。
同時に、とろりとしたものが蛍の奥から流れ出る。
蛍は手を伸ばして、そこに触れた。
自分の手が触れただけで、敏感になっているそこはぴくりと震えた。
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